水は、鰻の命そのものである。私たちが養鰻場の水質に執着するのは、単なる飼育環境の問題ではない。水の味が、そのまま鰻の味になるからだ。
九州の豊かな地下水は、ミネラルバランスが絶妙に整っている。この水で育った鰻は、臭みがなく、身が締まっており、旨味が凝縮される。反対に、水質の悪い環境では、いくら餌や技術を磨いても、素材本来の力を引き出すことはできない。
良い水は、鰻に語りかける。鰻は水に応え、その恵みを身に宿す。
私たちは毎朝、水温・溶存酸素量・pHを計測する。数値の微細な変動から、鰻の状態を読み解く。この繰り返しが、六十年の「目」を育てた。
水を知れば、鰻を知る。刀鰻が産地と水源にこだわり続ける理由は、ここにある。