九州南部、霧島山麓。朝霧が棚引く谷間に、刀鰻の養鰻場はある。創業者が六十年前にこの地を選んだのは、偶然ではない。
豊富な地下水、温暖な気候、そして何より、人の手が入りすぎていない自然の静けさ。鰻は繊細な生き物だ。ストレスを感じると成長が止まり、味も落ちる。この地の穏やかな環境が、鰻を豊かに育てる。
良い環境は、何も語らない。ただ、結果で示す。
私たちは年に数回、産地を訪れる。数値だけでは分からない、水の表情、鰻の動き、空気の質感。五感をフルに使って、その年の鰻の状態を見極める。
霧が晴れた後の養鰻池に差し込む朝日。水面を跳ねる鰻の姿に、今年も良い鰻が育っていることを確信する。この風景が、刀鰻の品質の源である。